教授法紹介

  • コンセプトマップ

コーネル大学のジョセフ・ノヴァクらによって1970年代に開発された図を用いた表現方法。コンセプトマップを作ることによって、異なる概念はお互いに同位・下位・上位に結び付けられていき、階層的に視覚化されていく。コンセプトマップの作成により、学習者の思考が整理される。グループ学習においては、コンセプトマップを使用してお互いの考えを表現することにより相違点を確認し、議論を深めていくことが可能になる。このため、コンセプトマップは複雑な問題を共有し、あらたな知識を創造する際の道具として使われる。

 

  • マインドマップ

英国のトニー・ブザンによって1970年代に開発された蜘蛛の網のような図を描いていく表現方法。マインドマップを作成することによって、頭の中で考えていることを脳内の構造に近い形で描き出すことにより記憶を整理し、発想をしやすくする。1枚の紙の中央に、表現したいテーマやキーワードをセントラルイメージとして中央に描き、そこから放射状に連想するキーワードやイメージを繋げながら広げていく。さらに、色や記号を効果的に使用するほか絵を用いることによって、作成者は身体感覚を反映させながらマインドマップを作成していく。この過程によって、自分の考えや感じ方が可視化され、さらには、他人の考えや感じ方との繋がりも可視化される。

 

  • チームベースドラーニング(TBL)

1980年代にオクラホマ州立大学のラリー・ミッチェルセンが開発した。TBLは、Readiness Assurance Processと呼ばれる予習度確認作業とApplication Activitiesと呼ばれる応用問題に取り組む2つのパートからなる。つまり、事前学習によって学習課題に取り組む前提知識の獲得をまず優先し、その上で、前提知識を応用した課題に取り組ませることにより深い学びを実現しようとする。したがって一般的なTBLでは、複数回の授業にわたって一つの単元やトピックを学ぶ。

 

  • ラーニングスルーディスカッション(LTD)

LTDは課題文を読み取るための読解法。グループで学習するが、仲間と学ぶまえにまず1人で勉強することが前提となっている。LTDでは、1人で勉強する際に学習者は予習ノートを作成する。そのあとに、グループでミーティングを行う。その両方の流れはステップ1からステップ8までの「LTD過程プラン」として体系立てられている(下記表1参照)。ステップ2からステップ7は、予習ノート作成時は、ステップ1が「課題を読む」(全体像の把握)、ステップ8が「リハーサル」(ミーティングの準備)であり、ミーティング時はそれぞれ「導入」(雰囲気作り)、「活動の評価」(学習活動の評価・ミーティングの振り返り)である。しかし、ステップ2からステップ7は表のようにどちらも同じになっている。

LTDの8つのステップ

(表1)LTDの8つのステップ(予習ノート作成時とミーティング字の比較)

このステップにしたがって、課題文を読んだあと予習ノートを作り、グループでは課題文を見ないで、この予習ノートに基づきながらディスカッションを行う。

 

  • プロブレムベースドラーニング/プロジェクトベースドラーニング(PBL)

両者とも起源はジョン・デューイの経験主義教育に遡る。プロブレムベースドラーニング(Problem Based Learning)はデューイの考え方をもとに米国やカナダの大学における医学教育現場から展開されてきた。学生たちは課題を与えられ、その課題に対する解決方法を探していく学習である。他方、プロジェクトベースドラーニング(Project Based Leaning)では、論争となっている事例が与えられるが、課題自体は明確ではない。学生たちはその論争の根底にある何が問題かを考えながら課題を自分たちで設定し、解決策を模索していく。しかしながら、後者に前者が含まれるという定義も存在し、両者の区別がはっきりしないこともある。

 

  • フォーラムシアター

ブラジルの演劇家であるアウグスト・ボアールが考案した観客参加型演劇手法の一つ。ボアールはパウロ・フレイレの被抑圧者の教育学をフォーラムシアターによって実践に用いようとした。フォーラムシアターは3部構成となっている。第1部は演劇の実演である。だが、この演劇は主人公が葛藤に屈するシーンで終わる。第2部はジョーカーと呼ばれるファシリテーターが観客と演者を架橋し、観客が主人公に代わって新しいエンディングを即興で演ずる。これが複数回行われ、複数のエンディングが作られる。第3部は振り返り討論である。第1部と第2部を振り返って演じられた内容の現実応用性が話し合われる。したがってフォーラムシアターの目的は、観客を演劇への即興参加を通して、実演者たる俳優(Spec-Actor)に変容させ、参加者が変革を創出する主体としての意識と意思を内面に形成することにある。

 

  • フィールドワーク

現地調査、現場調査、野外調査などと訳されている。対象とする現場に出かけていって観察や聞き取りなど、人と状況に関わりながら調査を行う。フィールドワークでは「企画-実行-分析-報告」という過程を経験する。主体的に関与しないと調査がすすまないため、アクティブラーニングの要素が多く含まれているといえる。

 

  • サービスラーニング

児童・生徒・学生が教育的に組織された貢献活動への参加を通して、学問的な知識や技能の深化を図るとともに、市民性(社会性等の汎用的能力)を育成することを狙いとする教育方法であり、「課題解決型学習」の一つとみなされている。サービスラーニングでは学びと貢献を両立させるところに特徴がある。そのため、「指導者(実習校教員)-実習者(学生)」という縦の関係を基本とする教育実習や貢献を第一義とするボランティア活動とは異なる。(図1参照)

サービスラーニング

(図1)サービスラーニングのイメージ

 

  • ポートフォリオ

ポートフォリオとは、特定の目的に沿って、学び手が学びの努力や伸び・変容を多面的多角的かつ長期的に評価し、新たな学びに生かすために様々な学習物を集めたものである(これは学習ファイルとか元ポートフォリオと呼ばれることがある)。学期の終わり、あるいはプロジェクトの終了に際し、ポートフォリオが完成する。とりあえず全ての学習成果物を集めただけの学習ファイル状態でも、その量が比較的少なければ可能だろうが、分厚いファイルのままでは焦点化された評価は難しい。そこで、特定の評価項目に該当する成果物だけを抜き出し、ポートフォリオを再編して凝縮ポートフォリオを作成する。この作業を通じて学習者は、設定した評価項目に沿って自らの成長を可視化し、自身の成果物を整理する作業自体が高次の思考を必要とする学習の機会を得る。また、学習成果物を適切にファイリングする作業によって、学生は「情報の一元化」も身につける。